「てまひまオンライン」に並ぶ“おいしいもの”の生産者さんを訪ね、自然と向き合う姿勢や、ものづくりの哲学を訊く「食の匠のてまひまストーリー」。第7回目は、兵庫県は淡路島の洲本市で製塩を行う「脱サラファクトリー」代表の末澤輝之さんにお話をお伺いしました。淡路・五色島の美しい海や末澤さんの塩作りへの想いをぜひこちらの動画でご覧になってみてください。
お塩は命の源であり、なくてはならないもの。
人が食べる無機物は水と塩だけなのです。
もともと飲食業界に携わっていたという末澤さん。当時は自分たちが提供したものをお客様においしいと喜んでいただける、そのような仕事にご自身も喜びを感じていました。しかしながら、とあることがきっかけで自分たちが提供している料理の素材そのものに興味を持ち、いろいろと勉強するうちに「塩」へ辿り着いたそうです。「水や塩は人間にとって根本的に大事なもの。なのに、塩は海の成分を含んだものを製造しているところが少なかった」と。
現在、末澤さんの作業場がある淡路島では古の時代から塩作りが盛んだったそうです。淡路島では製塩土器などが多く出土していたり、万葉集では淡路島の塩作りが書かれていたり。さらには海人族(あまぞく)が朝廷に塩を献上していた歴史もあるといい、とても塩とゆかりがある土地であることがわかります。その淡路島の西側に位置する五色浜の海水を使って複数の工程を経て生まれるのが、自凝雫塩(おのころしずくしお)です。
古事記の冒頭にある「国生み神話」。伊弉諾尊(いざなぎのみこと)・伊弉冉尊(いざなみのみこと)が天沼矛(あめのぬぼこ)で下界をかき回し、矛先から滴り落ちた塩の雫が固まって「おのころ島」ができたと記されているそうです。そのおのころ島が淡路島でないかといわれています。これが自凝雫塩(おのころしずくしお)のネーミングの由来となっています。
通常の自凝雫塩は海水から摂れるその量は約1%。海水からマイクロプラスティックを除去するための濾過工程や二つの鉄釜で炊き上げる濃縮、結晶化など時間をかけた丁寧な工程を経て鉄分やミネラルを多く含んだ塩が完成します。その安心・安全な商品特性により食材にこだわりを持つビーガンやマクロビオテックの方々からの支持も高いそうです。てまひまオンラインで取り扱っている「自凝雫塩レアソルト」はその一辺が3~5mmの大粒の塩で、海水の量のわずか0.1%しかできないと言います。その見た目の美しさと、素材の味を引立ててくれる奥深い味わいはレアソルトという名に相応しい一品です。
海風の音が聞こえる作業場は、薪を燃やす赤い炎と鉄釜の塩分が時間をかけて形成した鍾乳石のようなつららのコントラストがとても印象的でした。その空間で海水という自然の素材と向き合い美しい塩を形作っていく姿は、あたかもアトリエで作品を制作する陶芸作家のようでもありました。
動画・写真/松永 望 文/山田 修