「てまひまオンライン」に並ぶ“おいしいもの”の生産者さんを訪ね、自然と向き合う姿勢や、ものづくりの哲学を訊く「食の匠のてまひまストーリー」。第8回目は、新潟市で果樹園を営む「ヤマヨ果樹園」代表の小柳雅敏さんにお話をお伺いしました。
新潟は世界一のルレクチェの産地
ひとりでも多くファンになってほしい
代表の小柳雅敏さんが18代目という長い歴史があるヤマヨ果樹園。現在の新潟市南区大郷という地域に加賀の国から移住してきたご先祖が米作りを、そしていつからか果物を生産し始めたそうです。地元の文献史料によると約500年前には大郷地区の梨を藩主に献上していたとあります。当時は現在のような棚栽培ではなく立ち木仕立てでの栽培だったそうで、果実の収穫だけではなく稲を枝にかけて乾燥させる用途としても活用されたようです。
今から約100年前にヨーロッパから新潟に入ってきたルレクチェ。ラフランスなどの西洋梨品種の一つです。栽培が難しく、食べられるまでにロスが多い、病気にも弱いなど安定的な生産量を確保するのが難しい「幻の西洋梨」と呼ばれていたそうです。そのようなことから新潟県などと協力し「西洋梨研究会」を発足。ルレクチェの栽培方法から追熟などのメカニズムを解明してきました。その後、新潟県も生産を推奨したことで生産者も増えたそうです。
さらにヤマヨ果樹園では「生態系生体システムプログラム農法」という農法を取り入れています。栽培する土地の地熱エネルギーを高めることで力のある果物が栽培できるという農法のことで、他の生産者との差別化を図るべくこれまで試行錯誤されてきました。そのおかげで触感もよく劣化も少ないルレクチェが栽培できるようになりました。西洋梨の品種ということからラフランスのようなざらついた食感を想像しがちですが、ルレクチェは果肉感があってやわらかく糖度だけでなく酸味もバランスよく感じられる果物です。ヤマヨ果樹園のルレクチェは全国に流通され都内の有名百貨店や専門店でも取り扱われており非常に評価が高い商品です。
しかしながらルレクチェの生産量はラフランスの10分の1程度。市場への流通も毎年12月だけに限られているので知名度もなかなか上がりませんでした。それがきっかけとなり賞味期限も長く、手軽に食せるジュースの開発を始めたそうです。ジュースの原料には単独で出荷できない規格外品を使用していますが腐敗につながるようなものや小さくて渋みを伴ったものは一切使用していません。美味しくできる搾汁のタイミングなども研究されてきたクオリティの高い果汁100パーセントジュースです。
現在フランスでは絶滅種となったルレクチェ。日本国内における生産量の約90%は新潟県です。その理由としては新潟県の気候や土壌がルレクチェに適していただけでなく、栽培に関する研究の成果が大きく寄与した証だと考えられます。今や新潟県は世界一のルレクチェの産地。ヤマヨ果樹園には樹齢100年のルレクチェの樹もあります。代々受け継がれてきた長い歴史と、一人でも多くルレクチェのファンになってほしいという“これから”を語っていただいた小柳さんの想いをぜひこちらの動画でご覧になってみてください。
動画・写真/松永 望 文/山田 修