和食遺産VOL.9/おっきりこみ(群馬県)

各地の気候風土とそこで穫れる食材とを礎に育まれてきた日本の郷土料理。連載「未来に伝えたい、ニッポン和食遺産」では、先人たちの知恵と想いが込められた47都道府県の逸品を「ニッポン和食遺産」と名付け、人気の郷土料理店のレシピとともにご紹介します。連載第9回目は群馬県の「おっきりこみ」です。

群馬県の冬の風物詩である「おっきりこみ」は、幅広の手打ち麺をたっぷりの野菜とともに煮込んだ麺料理。昔から良質な小麦の産地として知られる群馬県ならではの郷土料理であり、何ともユニークなその名の由来は、汁の中に手打ちした生地を切っては入れ、切っては入れ……する様子からだという説が有力とされています。群馬県出身者の誰もが“おふくろの味”と認める「おっきりこみ」は、2014年に県の無形民族文化財にも選定されており、地元ではコンビニエンスストアでも販売されているそうです。

三寒四温のこの季節、肌寒い日のメニューにぴったりな「おっきりこみ」。今回は鰹だしと鶏白湯スープをブレンドした、旨味たっぷりのレシピをご紹介します。麺は市販の「おっきりこみ」麺を使用していますが、うどんでも代用できます。いずれの場合も手打の生麺で打ち粉(小麦粉)がついた状態のものを選ぶと、汁にとろみがつき、より体を温めてくれる一品に仕上がります。また、「おっきりこみ」は作ってから二日目がおいしいともいわれ、群馬の方言ではこのことを「おっきりこみ」の「立てっ返し(本来は、風呂を沸かし直すことを指す言葉)」と呼ぶそうです。自宅で作る際には大きな鍋にたっぷりと作り、地元の方に倣って「おっきりこみ」の立てっかえしを味わってみたいですね 。

材料(2人分)

大根1/4本 人参1/2本 ごぼう1/3本 椎茸4個 鶏もも肉100g おっきりこみ麺(市販品)300g 【煮汁】鰹だし360㏄ 鶏白湯スープ(市販品)360cc かえし(市販品・手に入らない場合はそばつゆまたは醤油とみりんで代用)適量 【トッピング】長ねぎ適量 三つ葉適量 白煎りごま適量

作り方
①大根・人参は皮をむい銀杏切りにし、ごぼうは洗って泥を落としたら、ささがきにし水に晒しおきます
②椎茸はサイズにより半分もしくは1/4サイズに切り、鶏肉はひと口大に切ります。
③煮汁用の鰹だしと鶏白湯スープを入れた鍋に❶と❷を入れ、強火にかけます。ひと煮立ちしたらアクを取り、中火に落として具材に火を通します。この間、こまめにアクを取り除きましょう。
④❸の鍋の具材にある程度火が通ったら、おっきりこみ麺を入れ、かえしを加えて控えめに味をつけ、麺のパッケージに表示されている茹で時間どおりに煮込みます。
⑤❹は煮込むと味が濃くなることがあるので、出来上がり直前に味見をし、物足りない場合は、かえしを少々足して調えます。
⑥❺を器に盛り付け、小口に刻んだ長ねぎ、適当な長さに切った三つ葉、白煎り胡麻などをトッピングしたら完成です。

教えてくれたのは…

てっちょこ

群馬県出身のご主人が営む、炭火焼き鳥がメインの一軒。日本酒はすべて群馬県産をチョイス、食材も積極的に県産品を仕入れる、趣のある一枚板のカウンターは群馬県産の杉板を使用したもの……と、あふれんばかりの郷土愛に満ちたお店です。8時間てまひまかけて作った濃厚鶏スープを使用した「おっきりこみ」は、ここでしか味わえない絶品です! 

●東京都世田谷区北沢3-2-10 堀口ビル B1 TEL:03-3446-0551 

群馬県の食データ肥沃な土地やきれいな水、年間を通して長い日照時間といった好条件に恵まれ、穀物や野菜が数多く作られています。小麦の生産量は全国4位。野菜では、こんにゃく芋が全国1位、キャベツ、キュウリ、フキが全国2位です。果物の栽培も盛んで、全国2位の生産量を誇るブルーベリーや梅のほか、リンゴ栽培にも力を入れています。また、海がない代わりに畜産業も盛んで、県内には多くのブランド牛・豚があることで知られています。小麦の一大生産地であることから、「おっきりこみ」のほか、つみっこ、上州焼餅、水沢うどん、味噌饅頭など小麦を使った郷土料理、伝統食が豊富です。


取材・文/伊藤ゆずは 写真提供/てっちょこ