和食遺産VOL.6/牡蠣鍋(宮城県)

 各地の気候風土とそこで穫れる食材とを礎に育まれてきた日本の郷土料理。連載「未来に伝えたい、ニッポン和食遺産」では、先人たちの知恵と想いが込められた47都道府県の逸品を「ニッポン和食遺産」と名付け、人気の郷土料理店のレシピとともにご紹介します。連載第6回目は宮城県の「牡蠣鍋」です。

「海のミルク」と称されるほど栄養豊富で滋味深い味わいの牡蠣は、まさにいま、1~2月が旬。広島県に次いで全国第二位の生産量を誇る宮城県の牡蠣は、やや小ぶりながら濃厚な旨味が最大の特徴と言われています。今回はその牡蠣を主役に、香りのよい野菜や豆腐を入れ、仙台味噌で味付けをした「牡蠣鍋」を作りましょう。具にもだしにもなる牡蠣は産地直送の生牡蠣を使うことをおすすめしますが、入手が難しい場合はぜひ産地で急速冷凍された冷凍モノをお試しください。鍋にしたときに、スーパーで手に入る生牡蠣よりも、旨味がぐっと引き立つこと間違いなしです。ぷりっぷりの食感が残るよう、牡蠣の火入れは慎重に。具材に染み込んだ、牡蠣のだしまで余すことなく味わい尽くしましょう。

牡蠣といえば、県内有数の産地であり、日本三景の一つに数えられる絶景が松島。なんと松島には、「牡蠣鍋クルーズ」なるユニークなサービスがあるとか。遊覧船で大小約260の島々が浮かぶ松島湾を巡りながら牡蠣鍋が食べられるなんて、想像しただけで頬がゆるんでしまいませんか? なかなか旅に出られないご時世ではありますが、ご自宅で牡蠣鍋を味わいつつ、彼の地に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

材料(2人分)

牡蠣6個 焼豆腐1/2丁 しいたけ2個 しめじ1/3パック 人参1/2本 大根1/3本 せり(または春菊)1束 白菜1/4個 【煮汁】鰹と昆布の合わせだし720㏄ おろし生姜40g 酒60㏄ みりん60㏄ 仙台味噌60

作り方

焼豆腐は1/4サイズに切ります。しいたけは石づきを切り落とし、飾り包丁を入れます。しめじは石づきを切り落とし、食べやすい大きさに手でほぐします。
②人参、大根は 1㎝幅に輪切りし、かつらむきしていきます。
③せりは根っこも食べられるので、洗う際に土をしっかり落とし、食べやすい長さに切ります。白菜は3㎝角に切ります。
④煮汁用のおろし生姜、酒、みりん、仙台味噌をボウルに入れてよく混ぜ合わせ、温かいだしをかけて溶きのばし、鍋に移します。

⑤❹に焼豆腐、しいたけ、しめじ、白菜、せりの根っこを入れて、強火にかけます。 
⑥❺が沸騰したら人参、大根、せりの葉を入れます。最後に牡蠣を入れ、火が通れば完成です。


教えてくれたのは…

仙台旬風 冨和利 日本橋店

牡蠣をはじめ牛たん、メカジキ、ホヤなど産地直送の新鮮食材が炉端焼き、鍋、フライなど多彩な調理法で堪能できます。常時30種以上の銘柄が揃う宮城の地酒も圧巻。月替わりの旬食材で作るオリジナルメニューを味わいに、ぜひ足を運んでみてください。

●東京都中央区日本橋3-8-3 日本橋通りビルB1 TEL:03-3516-2540  
※2020年1月22日現在、緊急事態宣言発出により休業中。再開時期はお店のサイトなどでご確認ください。 https://g840103.gorp.jp

宮城県の食データ

広大な平野が広がる豊沃な土地を活かし、米作りと畜産が盛んな宮城県。「だて正夢」や「金のいぶき」などの県産米や「仙台牛」「宮城野豚」などのブランド食材の強化に力を入れています。野菜では、せりやパプリカが生産量で全国1位を誇るほか、大豆、ツルムラサキ、ソラマメなども全国上位のシェアを占めています。県内には気仙沼、石巻、塩竃などを代表とする142の漁港があり、水産業でも全国屈指の存在です。豊富な食材を活かした昔ながらの郷土料理はもちろん、石巻焼きそば、せり鍋など近年生まれたご当地グルメも見逃せません。 


取材・文/伊藤ゆずは 写真提供/仙台旬風 冨和利 日本橋店