和食遺産VOL.5/芋煮(山形県)

 各地の気候風土とそこで穫れる食材とを礎に育まれてきた日本の郷土料理。連載「未来に伝えたい、ニッポン和食遺産」では、先人たちの知恵と想いが込められた47都道府県の逸品を「ニッポン和食遺産」と名付け、人気の郷土料理店のレシピとともにご紹介します。連載第5回目に取り上げるのは、山形県の「芋煮」です。

山形県の人々にとって、秋に行われる「芋煮会」は参加必須の一大イベント。家族で、あるいはご近所さんや職場の方と……平均すると1人あたり年3回以上の芋煮会に参加するというデータもあるそうです。河川敷などの屋外に多くの人々が集い、里芋の入った大鍋を囲む姿を、テレビのニュースや新聞でご覧になったことがある方も多いのではないでしょうか。

芋煮の起源には、大きく分けてふたつの説があるとされています。ひとつ目は、江戸時代に最上川で船に荷物を載せる船頭たちが、里芋と棒鱈を煮て食べたのが始まりという説。ふたつ目は、旧暦の八月十五夜の「芋名月」の日に、芋をお供えする習わしから生まれたというものです。現在では地域によって味つけや具材が異なり、様々なバリエーションが見られる芋煮ですが、今回は山形が誇るブランド牛をたっぷりと使用した、ちょっと贅沢なご馳走レシピをお届けします。

材料(2人分)
牛肉(手に入れば山形牛や米沢牛を)240g 里芋(小)8個 長ねぎ1本 糸こんにゃく100g 平茸100g A:煮汁】醤油だし(山形の丸十大屋のものがおすすめ)適量 砂糖適量 みりん適量 水適量
作り方

①里芋は皮をむき、たっぷりの湯(分量外)を沸かした鍋で5分から10分、下茹でします。
② 長ねぎは斜め切りにし、糸こんにゃくは食べやすい長さに切ります。平茸は食べやすい大きさに割いておきます。
③【A】の醤油だし、砂糖、みりんを、すきやきの割下よりも甘さが控えめになるよう調合し、最後に水を加えて薄めの味に加減します。
④❸の中に牛肉以外の材料をすべて入れ、中火にかけます。
⑤❹の具材すべてに火が通って沸騰したら、食べる直前に牛肉を入れます。牛肉に火が通れば完成です。

 教えてくれたのは…

 新宿 樽平

300年以上続く山形県東置賜郡の蔵元、樽平酒造直営の郷土料理店。蔵元直送の純米酒「住吉」や「樽平」とともに、山形名物の玉こんにゃく、きゅうり・茄子・生姜・茗荷を刻んで醤油で味つけした「だし」、子持ちニシンを焼いた「カド焼き」が味わえます。

●東京都新宿区新宿3-23-5 新東ビル2F
  TEL:03-3354-7382

山形県の食データ全国第1位の生産量を誇るさくらんぼや洋梨の他、桃、葡萄、西瓜などの果物や米の生産で、全国上位を占めています。また、ブランド銘柄をはじめとした山形県産牛や豚の食感や味わいも高く評価されており、畜産にも力を入れています。雪菜や野菜の干し物など、雪国ならではの知恵の活きた食材を用いての郷土料理も数多く見られます。

 

写真・文/伊藤ゆずは