和食遺産 Vol.2/せんべい汁(青森県)

各地の気候風土とそこで穫れる食材とを礎に育まれてきた日本の郷土料理。連載「未来に伝えたい、ニッポン和食遺産」では、先人たちの知恵と想いが込められた47都道府県の逸品を「ニッポン和食遺産」と名付け、人気の郷土料理店のレシピとともにご紹介します。連載第2回目を飾るのは、青森県の「せんべい汁」です。

肉や魚、季節の野菜といった具だくさんの汁の中に、鍋専用の南部せんべい(おつゆせんべい)を割り入れるという何ともユニークなこの郷土料理は、青森の中でも八戸を中心 とした県南部でよく食べられるもの。地元では学校給食のメニューや家庭料理のレパートリーの一つとし て定着しており、スーパーなどでは「せんべい汁セット」なども販売しているそうです。

熱々に煮えたせんべいをほおばるたび、口の中にじゅわっと広がるだしの旨味……。何ものにも代え難いこの食感は、一度食べたらやみつきになること間違いなしです。ふわっ とまぁるい味わいの純米酒、地元青森の「じょっぱり」や「豊盃」などの冷酒や燗酒とともに頂き、 身体を芯から温めましょう。

材料(2人分)
鶏もも肉30g 豆腐35g キャベツ30g 笹がきごぼう15g 人参10g しめじ20g  えのきだけ40g 長ねぎ25g マロニーちゃん20g ほうれん草30g 南部せんべい4枚
【A:せんべい汁の地】鰹だし 700g 醤油 24g 薄口醤油28g みりん16g 酒3g 塩2g   鶏ガラスープの素12g  ネギ油(あれば)10g
作り方

①せんべい以外の具材をすべて一口大に切る。
②せんべい汁の地をすべて鍋に入れて混ぜ合わせる。
③ ❷の鍋に❶を入れて強火にかけ、沸騰したら中火にする。
④❸の食材に火が通ったら一口大にしたせんべいを割り入れ、中火で煮込む。
⑤❹のせんべいがやわらかくなったら、食べ頃です。

  教えてくれたのは…

北の台所 おんじき虎ノ門
 八戸出身のご主人が切り盛りし、青森県津軽・南部地方の料理を得意とする店。青森にあった古い旅館の一部を移築しており、郷土色満点の店内で 頂く八戸漁港直送の新鮮な魚介には、舌鼓を打たずにはいられません。
  ●東京都港区虎ノ門1-2-15 虎ノ門YSビル B1
  TEL:03-6435-6601 https://onjiki.jp/toranomon/

 

青森県の食データりんごのイメージが強い青森県ながら、にんにく、ごぼうの収穫量も日本一。大根、人参、蕪などの根菜類や米の生産地としても有名です。日本海、太平洋、津軽海峡と3つの海に囲まれていることから海の幸も実に豊富。県内は気候風土の違いによって津軽地方、下北地方、南部地方、沿岸地帯の4つに分けられ、各々異なる食文化を形成しています。

 

取材・文/伊藤ゆずは 写真提供/「北の台所 おんじき虎ノ門」 撮影(店舗)/小野寺宗貴事務所