和食遺産VOL.13/イワシのだんご汁(千葉県)

各地の気候風土とそこで穫れる食材とを礎に育まれてきた日本の郷土料理。連載「未来に伝えたい、ニッポン和食遺産」では、先人たちの知恵と想いが込められた47都道府県の逸品を「ニッポン和食遺産」と名付け、人気の郷土料理店のレシピとともにご紹介します。連載第13回目は千葉県の「イワシのだんご汁」です。

日本有数のイワシ漁獲量を誇る九十九里の郷土料理「イワシのだんご汁」。一般的には「イワシのつみれ汁」という通り名で知られているかもしれませんが、九十九里では愛着をもって「だんご汁」と呼ばれます。イワシは豊富に獲れる一方、足がはやいので、少しでも長く保存し、おいしく食べられるようにと、すり身に加工する調理法が考案されました。現在では九十九里だけでなく、千葉県の家庭や和食店でよくふるまわれる汁物として親しまれています。数年前までは、九十九里町を挙げての「イワシのだんご汁コンテスト」が毎年のように開催され、町内外から集ったチームが独自の味付けのだんご汁で競い合ったといいます。町民にとって、いかに思い入れのある郷土料理かが分かるエピソードです。

また、「イワシのだんご汁」でしか出せない深いコクのある味わいは、イワシの脂ののり方や種類によっても異なるといいます。5月から梅雨時にかけては真イワシが1年で最も脂がのる旬に入り、刺身で食べるにはベストシーズンとされていますが、この時季にだんご汁に使うなら、脂が弱い淡泊な片口イワシの方が上品な風味に仕上がるようです。脂ののり方は季節によって変わるので、年間を通して味の違いを比べてみたいですね。さらに今回のレシピでは、ふんわりとした口溶けになるように玉素(たまもと)を使っています。ひと手間かけることでプロの味が再現できるので、試さない手はありません。まとめて作って、1個ごとにラップに包んで冷凍し、食べる分だけ吸汁に落としてお召し上がり下さい。

材料(20人分)

中羽イワシ(真イワシ)15尾 長ネギ1本 生姜20g 味噌 30g  片栗粉30g 味の素少量 かつおだし3600㏄ 塩適量 料理酒適量 濃口しょうゆ適量 万能ネギ1/2

【A:玉素】卵黄個 サラダ油80㏄

作り方
①玉素の材料【A】を混ぜ合わせます。サラダ油は少しずつ加えていき、マヨネーズ状の固さになるまでよく混ぜます(フードプロセッサー等の利用を推奨。❷も同様)。
②イワシの骨と皮を取り除き、粗めに切ります。ポイントは食感を残すため、細かくし過ぎないようにすること。
③ボウルに❷を入れてから、みじん切りにした長ネギと生姜、【A】、味噌、片栗粉、味の素を加えて、手でよく混ぜます。
④あらかじめ用意しておいた、かつおだしを入れた鍋に、塩、料理酒、濃口しょうゆを加えて、吸汁を作ります。
⑤中火にかけた❹に、❸で混ぜたものをスプーンなどでだんごにし、吸汁に落としていきます。
⑥➎のだんごが、浮いてきたらすぐにすくい上げます。火が入り過ぎると、再び沈んで底で崩れてしまうので要注意。
⑦お椀に注ぎ、刻んだ万能ネギを浮かべれば完成です。

教えてくれたのは…

サンライズ九十九里

千葉県・房総半島東岸、九十九里浜で海に面して弧を描くように立つ、町のシンボル的ホテル。太平洋を眼下に望む全室オーシャンビューの客室や、レストラン「はまゆう」の旬の新鮮な魚介料理が評判。料理は宿泊客以外も楽しむことができ、これからの季節におすすめなのは、イワシづくしのお膳「九十九里三昧」。イワシのうす造り、なめろう、だんご汁に加えて、イワシのフライか天ぷらをお好みで選べます。※営業時間などはお出かけの前にお問い合わせください。

●千葉県山武郡九十九里町真亀4908 TEL:0475-76-4151 https://www.sunrise99.jp/

千葉県の食データ年間を通して穏やかな気候の千葉県は、半島に位置することから海に面する地域が広く分布し、内房と外房には全国1位の水揚量を誇る銚子漁港のほか、勝浦、富津など数多くの漁港を擁します。片口イワシ、スズキの水揚は全国1位。伊勢海老、真イワシ、金目鯛、サバ、サンマ、アサリ、ハマグリ、海苔なども全国有数の生産県として知られています。農産物では落花生が特に有名。他にもネギ、キャベツ、ホウレン草、枝豆、春菊、梨、琵琶、イチゴなど、多種多様な野菜と果物の生産が盛んです。稲作や酪農にも力を入れているほか、B級グルメでは「勝浦タンタンメン」が全国的に有名です。


取材・文/有元えり 写真提供/サンライズ九十九里