「おいしい本、いただきます。」は、食にまつわるさまざまなウンチクや名場面がいっぱいの、眺めておいしい、読んでおいしい本を紹介する連載です。13回目に取り上げるのはツレヅレハナコによる『ツレヅレハナコの薬味づくしおつまみ帖』。
こんな食べ方あったんだ!
驚きの薬味づかいが光る、
料理下手も安心のレシピ集。
『ツレヅレハナコの薬味づくしおつまみ帖』ツレヅレハナコ 著 PHP研究所 刊
ページをめくるたび、「へえ、この薬味、こんな使い方できるんだ!」と驚きが止まらないレシピ本をご紹介したいと思います。パクチー、ディル、ミント、バジル、万能ねぎ、みょうが……。この本に出合うまでは、スーパーの片隅におすまし顔で鎮座する彼らを見ると、料理好きがこぞって買うものでしょ?と遠巻きに眺めていたものです。買ってもどうせ余らせてしまうだろうし、とも。でも、ツレヅレハナコさんのレシピを眺めていると、薬味を使ったレシピへのハードルがどんどん下がっていくのです。
「ちぎってのっけるだけ!」の「ディルとあじの干物」なんて、何度作ったことか(作ったと言っていいのか?というレベルですが)。ディルといえば、フィンランドで食べたサーモンスープの中でお見かけして以来。永遠の料理初心者には、難易度の高い食材のひとつでした。それを何度も手に取るようになるなんて。この本には、一気に料理上手への階段を上った気にさせてくれるレシピが満載なんです。
薬味というと、添えものとして扱われることが多いと思います。そんな薬味を主役に押し上げたという点でも、本書は大発明ではないでしょうか。「みょうがを食べたいから、このレシピにしよう」とか「ミントとパクチーで東南アジア気分を味わおう」といった、逆転の発想が料理を楽しくしてくれるという発見もあります。
料理を作るなら、手の込んだことをしなくてはいけない。おつまみは、人に作ってもらうもの(つまり外で食べるもの)。いま思えば、よくわからないこだわりで、おうちごはんに手を出さない時期も長かった私ですが、ステイホームなこの1年を乗り切れたのは、間違いなくこの1冊があったから、と断言できます。いつものつまみも、香り高い薬味を加えるだけでお店の味に近づいた気がするのですから!
文・写真/吉野江里