和食遺産VOL.8/のっぺい汁(新潟県)

 各地の気候風土とそこで穫れる食材とを礎に育まれてきた日本の郷土料理。連載「未来に伝えたい、ニッポン和食遺産」では、先人たちの知恵と想いが込められた47都道府県の逸品を「ニッポン和食遺産」と名付け、人気の郷土料理店のレシピとともにご紹介します。連載第8回目は、新潟県の「のっぺい汁」です。

 新潟を代表する郷土料理である「のっぺい汁」は、お正月や冠婚葬祭などの際によく食べられる具だくさんの椀物。これまで本連載に登場した鍋や汁物同様、具材や味付けは地域や家庭ごとに様々なバリエーションがあり、さらには類似した名前の料理が奈良、島根、熊本などの日本各地に存在します。今回のレシピでとりわけ特徴的なのは、県内各所で鮭が水揚げされる新潟らしく、具材に塩引鮭といくらを用いること。「塩引」とは「塩をすり込む」ことで、水揚げされた鮭を捌き、一尾ずつ手作業で塩をすり込んでいくことを指します。塩引きされた鮭は、後に水洗いしてから干され、低温多湿の新潟特有の季節風に晒されることにより、生鮭にはない旨味や風味を増していくといいます。機会があればぜひ塩引鮭を入手して、本場さながらの味をお楽しみください。

 出来たてアツアツのおいしさは勿論のこと、冷蔵庫で冷やしたものもよく食されるという、のっぺい汁。里芋を入れることによって加わる自然なとろみのおかげで喉越しもよく、つるりといけます。春を迎えるこれからの季節、暖かな日には、のっぺい汁を「冷やし」で頂くのもおすすめです。

材料(2人分)

干し椎茸2個 干し貝柱50g 鶏もも肉50g 里芋2個 こんにゃく1/2パック 人参1/3本 大根1/4本 塩引鮭または甘塩鮭切り身2枚 水適量 塩少々 醤油少々 いくら適量 

作り方
①干し椎茸と干し貝柱はともに、かぶるくらいの水に漬けて、ひと晩戻しておきます
②鶏もも肉、皮をむいた里芋、こんにゃくはひと口大に切ります。人参、大根はそれぞれ皮をむいて短冊切りにします。
③❷をすべて下茹でし、水気を切っておきます。
④❶の干し椎茸と貝柱を、戻し汁ごと鍋に入れます。
⑤❹のなかに❸を入れ、具材にかぶるより少し多めの水を加えて、中火にかけます
⑥❺が沸騰したら弱火にし、アクを取り除きながら具材に火が通るまで煮ます。
⑦➏の食材すべてがやわかく煮えたら、塩とほんの少しの醤油で味を調えます。椀に盛り、上にいくらをのせれば完成です。

教えてくれたのは…

わっぱ飯いちや

薄い杉板を曲げて作った木箱にご飯を詰め、魚介などの具材をのせて蒸した「わっぱ飯」をメインに、新潟から直送された新鮮素材を使ったバラエティ豊かな郷土料理が楽しめるお店。蟹・鮭・いくらがたっぷりのった「大名わっぱ」や村上牛を贅沢に使った「牛しぐれわっぱ」は必食です。酒の肴やコース料理も充実しているので、メイド・イン・新潟にこだわった日本酒・ワイン・ウィスキーなどの美酒を片手に、ゆったりとした時間を過ごしてみませんか?

●東京都目黒区上目黒3-8-3  千陽中目黒ビル アネックス 2F TEL:03-6320-8030 https://wappameshi-ichiya.jp

新潟県の食データ米の生産量全国一位を誇る新潟県。その他農産物では「ル・レクチェ」で有名な洋梨や枝豆、なめこ・舞茸・ぶなしめじなどのきのこ類の生産量が全国上位を占めています。日本海沿岸では佐渡寒ブリ、南蛮エビ、ヤナギガレイなどの美味かつ良質な魚介類にも恵まれ、にいがた和牛、にいがた地鶏等の畜産物も高く評価されています。のっぺい汁やわっぱ飯以外にも、笹寿司、沖汁、佐渡煮しめなど、山海の幸を惜しみなく使った郷土料理が目白押しです。


取材・文/伊藤ゆずは 写真提供/わっぱ飯いちや