知恵袋 Vol.2/きのこは冷凍するともっとおいしくなる? おすすめの保存法と鍋のコツ

日々、口にしている食べものにまつわる「おいしい話」「耳よりな話」を目ききに教わる「食の目ききの知恵袋」。秋を代表する食材「きのこ」をもっとおいしくいただくコツを、東京・恵比寿のフランス料理店のシェフに伺いました。

 

【今回の目きき】山岡昌治さん
東京・恵比寿にあるフランス料理店「MUSHROOM」オーナーシェフ。フランスでの修業中にきのこの魅力に開眼。休日にはみずから山野を歩き回って、きのこを収穫することも。自然と生命を意識させる存在としてのきのこを軸に、旬の素材を用いて独創的な味わいを提供する。https://www.mush.jp/

「きのこは実はとても繊細な食材」という話を前回お伝えしました。そうとなれば、保存方法にも気を遣わなくてはいけない……かと言えば、そんなことはありません。そのまま冷凍すればOK。ただし、凍った状態ではカットしにくくなるので、料理に使いやすい大きさにしてから冷凍すると便利です。

冷凍したきのこを調理する場合も、解凍する必要はありません。解凍すると、水分と一緒にきのこの旨みも出ていってしまうので、解凍せずに使ったほうがよりおいしく食べられます。でも、その作用をうまく生かすこともできます。

 

おいしいきのこ鍋を作るコツ

これから寒くなると、きのこが大活躍する料理、お鍋の出番が増えるでしょう。きのこは火が通りやすい食材のため、最後のほうに入れる場合が多いかもしれませんが、冷凍しておいたきのこを水から入れてゆっくりと温めていけば、おつゆにきのこのいい味が出ます。

これは、昆布だしを取る要領と同じ。冷たい水から少しずつ温度を上げていくと、6070度くらいのところで、旨みのもとであるアミノ酸が増えてきます。そのため、なるべくその温度帯にある時間を長くすることで、いいダシが出ますし、より旨みが強くなります。

さらに言えば、昆布の場合は、ダシを取った後は味がなくなってしまうため取り出すしかありませんが、きのこなら取り出す必要がなく、他の野菜や食材から出た旨みを吸って、さらにおいしくなります。様々な食材の味をしっかり吸い込んだきのこ、間違いなくおいしいですよね。

もちろん、きのこの歯ごたえや、きのこそのものの味をしっかりと残したい場合には、他の食材よりも少し遅れて投入してもいいでしょう。その場合でも、冷凍のまま入れて問題ありません。

 

おすすめは、ダシと一緒に冷凍

このように、冷凍するとさらに使いやすくなるきのこですが、おすすめの冷凍方法は、いったんダシで煮てから、そのダシと一緒に冷凍することです。 

特に、昆布など他のダシで煮ると、別々のアミノ酸が合わさった相乗効果で旨みが何倍にも増します。それをしっかり吸い込んだ状態のまま冷凍することで、さらにきのこに旨みが染み込んでいくのです。ちなみに私の店では、昆布と鶏のだしで煮てから、小分けにして冷凍ストックしています。 

秋から冬には様々なきのこがスーパーにも並ぶようになります。ついつい、いつも同じきのこを買ってしまいがちですが、たまにはいろいろな種類を買ってみて、全部あわせて煮てからストックしておけば、より深い味が染みますし、使い方にもバリエーションが生まれます。

また、安いから……とまとめ買いしたような場合にも、そのまま冷蔵庫に入れておけばどんどん劣化して味が落ちていってしまいますので、カットして冷凍するか、煮てから冷凍することで、無駄なく長くおいしいきのこを楽しむことができます。

 

きのこを洗わないほうがいい理由

自宅できのこを扱う際に気をつけていただきたい点としては、なるべく早めに食べる(か冷凍する)ことと、できれば洗わないほうがいいということです。天然きのこは土がついていることもあるので洗ったほうがいいのですが、栽培きのこなら洗う必要はありません。 

一般に売られているきのこであれば、固くて食べられないような部分は切り落とされていますし、えのき茸の下についている培地の部分も、実は食べようと思えば食べられます(おいしくないし、食感も悪いので、決しておすすめはしませんが)。

ただ、なかにはどうしても洗いたいという方もいらっしゃると思うので、その場合には、すぐに使わずに乾かしてから使うことをおすすめします。というのも、きのこは水洗いするときの水道水を結構吸い込んでいますので、すぐ調理すると、それが出て来てしまうのです。

洗ったきのこを乾かすときには、風を当てるのがいちばんです。傷まないし、良い状態を保ったまま乾かせるからです。でも、自宅でそれをやるのは少々面倒だと思われますので、やっぱり洗わずに使ったほうが、より手軽においしく食べられるわけです。

もしも洗いたくなるような嫌なにおいがしているなら、残念ながら、きのこの状態がよくない証し。その場合には、水洗いして乾かしてから使ったり、焼くのではなく煮るなどして食べたりするといいでしょう。

 

なめこは二日酔いにも効く

ちなみに私のお気に入りきのこは、なめこ。定番のお味噌汁もいいですし、昆布だしやブイヨンスープで煮て、塩で味付けるだけでも十分においしく食べられます。 

なめこの魅力は何と言ってもそのヌメリですが、これは食物繊維で、胃腸の内側の壁を守ってくれる作用があります。また、なめこはアセトアルデヒド(アルコール)を分解する成分を持っているので、二日酔いのときにも最適なのです。ぜひ、お試しください。

今年は夏が遅くまで続いたせいで、秋冬のきのこが出回るのも遅くなっています。ひょっとすると、暑さの影響でいいきのこはあまり出ないかもしれません。それでも、気温がぐんと下がってから育つきのこは一段と味が強くなりますので、うまく冷凍を活用して、様々な食べ方できのこを楽しんでください。

山岡シェフおすすめの「なめこ汁」

文・構成/ドイエツコ