知恵袋 Vol.1/実はとても繊細なきのこ。鮮度と味を知るヒントは「におい」にあり!

日々、口にしている食べものにまつわる「おいしい話」「耳よりな話」を目ききに教わる「食の目ききの知恵袋」。まずは、お馴染みの食材「きのこ」について、東京・恵比寿のフランス料理店のシェフにお話を伺いました。

 

【今回の目きき】山岡昌治さん
東京・恵比寿にあるフランス料理店「MUSHROOM」オーナーシェフ。フランスでの修業中にきのこの魅力に開眼。休日にはみずから山野を歩き回って、きのこを収穫することも。自然と生命を意識させる存在としてのきのこを軸に、旬の素材を用いて独創的な味わいを提供する。https://www.mush.jp/

秋を代表する味覚と言えば、やっぱり「きのこ」ではないでしょうか。近年では、おかくずなどを混ぜた培地(菌床)で栽培する方法が広がり、一年を通してスーパーに並ぶようになりましたが、秋になって気温が下がると、原木栽培や天然のきのこも出回り始めます。

そんなきのこの「鮮度」を意識したことはあるでしょうか? 葉もの野菜などと違って目に見えて傷んできたり、明らかに味が落ちたりすることが少ないため、あまり気にしたことがないかもしれませんが、実は、きのこはとても繊細な食材です。

 

台風の後のきのこは味が落ちる?

それもそのはず、きのこは菌類。もとは目に見えないほど小さな胞子で、それが成長し、新たに胞子を放出するための器官として出来上がったのが、私たちが「きのこ」と呼んでいる部分です。そのため危機管理の能力に優れていて、ほんの少しの環境の変化にも敏感に反応します。

たとえば気温が1℃上がるだけでも、きのこは成長を早めて、早く胞子を出そうとします。また、湿度やマイナスイオン・プラスイオンといったものにも反応するため、台風が近づくと成長スピードが変わる、といった影響を受けることもあります。

さらに、きのこは収穫されてからも成長を続けますし、傘が開いた後は常に胞子を飛ばしている状態です。そのため、環境の影響を受けるのは栽培中だけでなく、収穫後の流通過程やスーパーの野菜売り場に並んでいるときでも、自宅の冷蔵庫の中でも同じです。

言い換えると、収穫後のきのこは時間の経過とともにどんどん劣化していっているわけで、同時に、味もどんどん落ちています。特に、輸送中などに高い気温にさらされてしまったきのこは鮮度の持ちが悪く、すぐに劣化してしまいます。

 

鮮度と味を見極めるヒントは「におい」

そんな繊細なきのこですが、鮮度や味の良し悪しを見た目で判断することは、なかなか難しいといわざるを得ません。その代わり、いいきのこを見分けるヒントとなるのが、においです。きのこが劣化すると、嫌なにおいがするようになります。

椎茸やエリンギなどでは、そのにおいが苦手という人もいるのですが、本当に新鮮なきのこであれば、きのこ本来のいい香りはしても、嫌なにおいがすることはありません。鼻につくような嫌なにおいがするということは、きのこの状態が落ちてきている合図なのです。

また、菌床栽培のきのこでは培地に含まれる成分が味を左右しますが、あまりよくない成分が入っている培地で育ったきのこの場合も、収穫から2〜3日すると嫌なにおいが出てくるようになります。これからは、ぜひ鼻できのこを嗅ぎ分けてみてください。

なお、原木栽培のきのこであれば、培地の成分の配合といった問題がないので、きのこ本来の味と香りを楽しむことができます。もちろん、自然に近いということは収穫の時期も量も限られるわけですが、だからこそ、旬の時期に存分に味わいたいですね。

 

秋冬ならではの「いいきのこ」を味わおう

気温が下がった秋から冬は、生育面でも管理面でもきのこにとって快適になるため、良い状態のきのこを手に入れやすくなります。また、どんどん売れることで、新鮮なきのこがどんどん出回る時期でもあります。

それに、冷たい気温の中でゆっくりと成長したきのこは、繊維質が強くなり、歯ごたえも強いしっかりとしたきのこになります。一年中食べられるきのこの、この時期にしか出合えない味わいを愉しんでください。

「マッシュルーム」のきのこ料理

写真提供/山岡昌治 文・構成/ドイエツコ