梅のすべてを、自分たちの手で
— 紀州本庄うめよし 硲美江さん —
📍和歌山県・みなべ町
和歌山県みなべ町。
梅干し発祥の地として知られるこの土地で、栽培から加工までを一貫して手がける「紀州本庄うめよし」。

ここでは、梅を育てるところから、梅干しや梅酒といった加工品づくりまで、すべてを自分たちの手で行っています。
その中心にいるのが、硲美江さん。
「梅農家でありながら、加工まですべてやっているところは、実はあまり多くないんです」
この場所でのものづくりは、40年以上前。
農家の長男だったお父様が梅づくりを始め、結婚を機に梅干しの加工へと広がっていきました。
以来、育てることと届けること、その両方を大切にしながら、梅と向き合い続けています。
梅干しから、梅酒へという広がり
時代の変化とともに、「梅干し離れ」が進んでいく中で、新たな挑戦として始まったのが梅酒づくりでした。
きっかけは、地域からの提案。
「梅を、別のかたちで届けられないか」
そうして約17年前に取得した梅酒の製造免許。
当時はまだ珍しかった、小ロットでの製造からスタートしました。
「絶対に、みなべ町の梅しか使わないんです」
さらに、使うのは梅のみ。
香料や酸味料といった添加物は一切使いません。
まるでワインのように、土地の個性をそのまま映し出す“テロワール”の考え方。
その姿勢が評価され、今では他の酒蔵とのコラボレーションも広がり、製造量も徐々に増えてきました。

小さな梅に、新しい価値を
数ある商品の中でも、強いこだわりがあるのが「カリカリ梅」。
もともとは、お父様が長年思い描いていたもの。
長野で製法を学び、ようやく形になった商品です。
しかし、このカリカリ梅には課題もありました。
使うのは、小さなサイズの梅。
一般的には評価されにくく、作る農家も少ない存在です。
「だからこそ、そこに価値をつくりたかったんです」
南高梅といえば、大粒でやわらかい梅干しのイメージ。
その中であえて小粒を活かすことで、新しい可能性を広げていく。
市場の中で埋もれてしまいがちな存在に、光を当てる取り組みでもあります。

見えないところにこそ、時間をかける
日々の仕事は、朝のラジオ体操と朝礼から始まります。
スタッフはおよそ20名。それぞれの持ち場で作業に取り組みます。
梅づくりは、実の収穫だけではありません。
土づくり、木の管理、そして加工まで。
「お客様が見るのは実の部分だけなんですけど、本当はそこに至るまでの過程がすごく大事なんです」
さらに、梅とともに使う紫蘇も自家栽培。
収穫のタイミングが重なるため、現場は一気に忙しさを増します。
それでも、手を抜かずに続けてきた積み重ねが、味として表れていきます。

日常に寄り添う、梅のかたち
おすすめの食べ方を尋ねると、返ってきたのはとてもシンプルな答えでした。
「納豆に混ぜるのがおすすめです」
特別な料理ではなく、日常の中で自然に取り入れられる存在。
それが、紀州本庄うめよしの梅のあり方です。
しっかりとした酸味と旨味が、いつもの食事に変化をもたらしてくれる。
主役になることもあれば、名脇役として支えることもある。
そんな柔軟さも、梅の魅力のひとつです。

土地の味を、そのまま届ける
みなべ町の梅であること。
自分たちで育てたものであること。
余計なものを加えないこと。
シンプルでありながら、決して揺るがない基準。
「ちゃんとつくったものは、ちゃんと伝わると思っています」
栽培から加工までを一貫して行うからこそ実現できる、まっすぐなものづくり。
紀州本庄うめよしの梅には、
土地と人の時間が、そのまま詰まっています。

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