野菜は、乾かすともっと面白い
— くろぜむ農園 山田靖子さん —
📍神奈川県・三浦市
神奈川県三浦市。
海からほど近い畑で、潮風を受けながら野菜づくりを行う「くろぜむ農園」。
春キャベツや大根など、三浦らしい野菜を育てる一方で、ここでは“乾燥野菜”というもうひとつのかたちのものづくりも行われています。
その中心にいるのが、山田靖子さん。
結婚をきっかけに農業の世界に入り、気づけば13年。
最初から農業を志していたわけではないといいます。
「家業だから、というのが最初でした」
そう話す山田さんですが、続けるうちに、この仕事の面白さに気づいていきました。
配るだけだったものを、届けるかたちへ
三浦では昔から、切り干し大根が身近な存在でした。
くろぜむ農園でも、それは商品というより、家族や近所に配るためのものでした。
転機となったのは、家族が丁寧に仕上げていた美しい切り干し大根。
「これを配るだけなのは、ちょっと違うなと思って」
そこから、“商品として届ける”という発想が生まれます。
白い大根だけでなく、緑や赤といったカラフルな野菜でも加工を始め、
さらに、自分たちで育てた野菜を乾燥させる取り組みへと広がっていきました。
三浦の野菜を、もっと持ち帰りやすく
三浦といえば、マグロや大根、キャベツ。
魅力的な食材が多い一方で、「持ち帰りにくい」という側面もあります。
重さや鮮度管理の問題から、お土産としてはハードルが高い。
「三浦のものを、もっと気軽に持ち帰れる形にしたかったんです」
乾燥野菜は、軽くて日持ちがよく、持ち運びもしやすい。
観光で訪れた人にとっても、ちょうどいい“お土産”になります。
そして何より、乾燥させることで野菜の味はぐっと濃くなる。
その新しい魅力に、山田さん自身も手応えを感じていきました。
素材そのものが、そのまま味になる
くろぜむ農園の乾燥野菜は、とてもシンプルです。
採れたての野菜を、切って、乾かすだけ。
味付けも、添加物も一切ありません。
だからこそ重要になるのが、野菜そのものの美味しさ。
「自分たちが食べて美味しいと思えるものをつくる」
その想いは、畑づくりから加工まで一貫しています。
丁寧に育て、丁寧に仕上げる。
その積み重ねが、味としてしっかり現れます。
忙しい日にも、ちゃんと野菜を
乾燥野菜は、日常の中でも使いやすい存在です。
たとえば、カップラーメンに少し足すだけ。
それだけで、食事の満足感がぐっと変わります。
「どうしても余裕がない日ってあるじゃないですか」
そんなときでも、少し野菜を足せることで、気持ちが少し軽くなる。
また、軽くてかさばらないことから、登山やアウトドアで使う人も増えているそうです。
使い方は決まっていなくていい。
日常の中で、自由に取り入れられるのも魅力のひとつです。
海風とともに仕上がる、三浦の味
大根やにんじんなどは、天日干しで仕上げられます。
畑からほど近い場所、海までわずか数十メートル。
その環境で受ける風と光が、独特の風味を生み出します。
一方で、フルーツやキャベツなどは専用の乾燥機を使用。
素材ごとに最適な方法を選びながら、品質を保っています。
天候に左右される難しさも含めて、自然とともにあるものづくりです。
手をかけた分だけ、きちんと返ってくる
「一生懸命やれば、ちゃんと返ってくる仕事だと思います」
農業に向き合う中で、山田さんが感じてきた実感です。
畑も、商品も、お客様も。
誠実に向き合えば、その分だけ応えてくれる。
そして今では、自分で考え、自分で決めていけるこの仕事が、
自然と自分に合っていたと感じています。
日常に、少しの余白と豊かさを
乾燥野菜は、特別な料理のためのものではありません。
ほんの少し加えるだけで、食卓の景色が変わる。
忙しい日でも、ちょっとした安心をくれる。
三浦の畑と海風がつくる、もうひとつの野菜のかたち。
くろぜむ農園のものづくりには、
日々の暮らしにやさしく寄り添うヒントが詰まっています。
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