和食遺産VOL.7/こづゆ(福島県)

 各地の気候風土とそこで穫れる食材とを礎に育まれてきた日本の郷土料理。連載「未来に伝えたい、ニッポン和食遺産」では、先人たちの知恵と想いが込められた47都道府県の逸品を「ニッポン和食遺産」と名付け、人気の郷土料理店のレシピとともにご紹介します。連載第7回目、東北地方の最後を飾るのは、福島県に伝わるハレの日の料理「こづゆ」です。

もともとは会津藩のご馳走料理だった、こづゆ。福島県においてはいまもなお、お正月やお祝い事などのハレの日に欠かせない料理の一つです。家庭ごとに異なるというレシピはお姑さんからお嫁さんへと代々引き継がれることが多いそうですが、そこには必ず守られるべきある決まり事が……。それは人参、大根、椎茸、麩、きくらげ等の具材の数を、必ず縁起が良いとされている「奇数」にすること。ご家庭で作る際もぜひ、料理を分かち合う方やご自身の幸福を願い、このゲン担ぎにならってみてはいかがでしょうか?

福島県内のスーパーや土産物店では、食材とだしが入ったレトルトのセットも販売されているという、こづゆ。今回は鰹だしと干し椎茸の戻し汁を使ったご家庭向きのレシピでご紹介します。入手可能な方は帆立の貝柱でだしをとって本格的なレシピに挑戦したり、糸こんにゃくや銀杏、里芋、人参などさまざまな具材を加えるなどして、アレンジをお楽しみください。

材料(2人分)

干し椎茸(かぶるくらいの水に浸け、ひと晩戻す)2個 大根1/8本 人参1/2本 生のきくらげ1/2パック 鰹だし(干し椎茸の戻し汁と合わせて)360㏄ 麩6個  白だし(市販品)適量

作り方
①干し椎茸は軸を取り、3㎜幅にスライスします。干し椎茸の戻し汁はとっておきます。
②大根は皮をむき1㎝厚さのいちょう切りに、人参は皮をむいて3~4㎜の厚さのいちょう切りにします。
③生のきくらげは硬い部分を取り除き、ひと口大にちぎります。
④❶の干し椎茸の戻し汁と鰹だしとを入れた鍋に、麩以外の具材を入れて強火にかけ、ひと煮立ちしたら中火にし、具材に火が通るまで煮ます。
⑤❹に麩を加えて1~2分煮たら、白だしを加えて味を調えて完成です。

教えてくれたのは…

福島 ふるさと料理 おらえ

福島から産地直送された食材で作る料理や日本酒は勿論のこと、店内の装飾やBGMに至るまで、福島に縁のあるものへのこだわりが溢れています。辛味噌をつける会津流で提供される馬刺しやソースかつ、こづゆがセットになったランチタイムの定食が評判。居酒屋でありながら女性ひとり客でも入りやすい雰囲気と、新宿駅より徒歩3分の好立地がポイント。味も使い勝手もよし、の一軒です。

●東京都新宿区西新宿1-12-6 新宿月光荘ビル3F TEL:050-5488-4645 https://gdjp505.gorp.jp

福島県の食データ北海道、岩手に次いで全国3位の広さを誇る福島県。東西にのびた広大な土地は日本海沿岸を含む「会津」、盆地の広がる「中通り」、太平洋沿岸の「浜通り」の3つのエリアに分かれており、各所で気候に合わせたバラエティ豊かな食材が育まれています。2020年度全国6位のシェアを誇る米作りのほか、桃や梨に代表される果物、キュウリやトマト等の野菜、さらには畜産や漁業も盛ん。こづゆ以外にも漁師料理の「どぶ汁」や山の幸を使った「山人料理」などの郷土料理が。近年では若者を中心に、「なみえ焼きそば」や「柳津のソースかつ丼」などのご当地グルメも人気を博しています。


取材・文/伊藤ゆずは 写真提供/福島 ふるさと料理 おらえ