和食遺産 VOL.3/ひっつみ汁(岩手県)

各地の気候風土とそこで穫れる食材とを礎に育まれてきた日本の郷土料理。連載「未来に伝えたい、ニッポン和食遺産」では、先人たちの知恵と想いが込められた47都道府県の逸品を「ニッポン和食遺産」と名付け、人気の郷土料理店のレシピとともにご紹介します。連載第3回目は、岩手県の「ひっつみ汁」です。

小麦粉に水を入れてこねたものを、ひっつまんで汁に投げ入れて作ることからその名がついたとされるひっつみ汁。岩手県全域で食べられている汁物ですが、汁の中に入れる具材やひっつみの固さは、家庭や店によって多種多様。観光名所としても名高い、盛岡の神子田(みこだ)朝市などでも販売されており、ここでは小麦粉を多めの水で溶きのばした、ゆるゆるのひっつみなどもお目見えします。ひっつみは県産品のアンテナショップや通信販売で市販品を入手可能ですが、小麦粉と水を練って好みの固さに調整し、“マイひっつみ作り”に挑戦してみるのも楽しいかもしれません。

今回ご紹介するひっつみ汁は、鰹と昆布の合わせだしに加え、鶏肉の脂から出るコク、さらには塩蔵きのこから出る、しみじみとした旨味がポイントです。フレッシュなきのこの入った鍋もおいしいけれど、ひっつみ汁をつくる際にはぜひ塩蔵きのこを使ってみてください。次の週末は、アツアツのひっつみを頬張りながら、岩手県の地ビールで乾杯……なんていかがでしょうか?

材料(4人分)
大根200g  人参100g ごぼう50g 塩蔵きのこ(市販品)100g(または舞茸・ぶなしめじ100g) 長ねぎ(煮込み用)50g、(仕上げ用)5g 鶏肉(部位はどこでも可。できれば皮つき)30g ひっつみ(市販品)200g 鰹・昆布合わせだし900㏄ 酒50㏄ みりん50㏄ 薄口醤油50㏄ 塩 少々 七味唐辛子 適宜
作り方

①塩蔵きのこを水につけ、塩出しをしておく。舞茸やぶなしめじで代用する場合は、小さく割いておくだけでOK。
②大根、人参はいちょう切りに、ごぼうは斜め薄切りにする。長ねぎは煮込み用を2㎝幅の小口切りに、仕上げ用を斜め薄切りにする。
③ 鍋に鰹・昆布合わせだしと❶、大根、人参、ごぼう、長ねぎ(煮込み用)を入れて強火にかける。
④❸が沸騰したら、酒、みりん、薄口醤油と鶏肉を入れ、弱火にして30分程煮込む。
⑤❹にひっつみを入れ、軽く煮立たせる。
⑥❺を器に盛り付け、仕上げに長ねぎ(仕上げ用)を散らす。お好みで七味唐辛子をふって出来上がり。

 教えてくれたのは…

さくら茶屋

飲食コンサルトでもあるオーナーが、岩手県産食材の美味しさと豊かさを多くの人に伝えたいとの思いから、2012年にオープン。不定期で開催される味噌造り教室や、蔵元の造り手さんを招いて行われる試飲会などのイベントもお見逃しなく!

  ●東京都世田谷区野沢1-35-1
  TEL:03-3410-6661 http://iwatenomegumi.com

 

岩手県の食データ

広大な土地を有効活用し、大根や人参などの根菜類に加え、きゅうり、ピーマン、レタスなどの野菜や米作りを意欲的に行っています。さらには牛、豚、鶏の出荷量も全国で上位を占め、沿岸部では漁業も盛んとあって、日本有数の総合食料供給地といえます。わんこそばに加えて近年では冷麺、じゃじゃ麺などの麺料理が有名ですが、もちを使った昔ながらの郷土料理もバリエーション豊かです。


取材・文/伊藤ゆずは 写真提供/「さくら茶屋」