和食遺産VOL.11/あんこう鍋(茨城県)

各地の気候風土とそこで穫れる食材とを礎に育まれてきた日本の郷土料理。連載「未来に伝えたい、ニッポン和食遺産」では、先人たちの知恵と想いが込められた47都道府県の逸品を「ニッポン和食遺産」と名付け、人気の郷土料理店のレシピとともにご紹介します。連載第11回目は茨城県の「あんこう鍋」です。

茨城県の冬の味覚を代表する「あんこう鍋」は、かつて漁師たちの貴重なスタミナ源として食されていたあんこうを、野菜と一緒に豪快に炊いた栄養満点の料理です。あんこうと言えば、平たい身体に大きな頭、巨大な口には鋭い歯が並び、一見グロテスクながらも、淡白な身にはコラーゲンやビタミンB12、A、Eなどがたっぷり含まれる高級食材として知られています。茨城県の海岸沿いを中心とする地域はあんこうの水揚げが多く、昔から「常磐路のあんこう」として有名ですが、特に肝が大きく育っている1~2月頃が旬だとされています。歯以外、身のほとんどを食べることができますが、「あんこう鍋」では“あんこうの七つ道具”として知られる部位(柳肉、肝、皮、卵巣、えら、ひれ、胃)を使用するため、それぞれの部位の食感の違いを楽しめるのが醍醐味です。

味付けは、一般的に味噌仕立てか醤油仕立てで、あっさりした風味のものが多く出回っていますが、今回ご紹介するどぶ汁仕立ては、その昔、漁師が船の上で調理する際に水を節約するために編み出した元祖というべき調理法に則ったもので、濃厚なコクを楽しめるまさに本場の味わいです。ぶつ切りにしたあんこうの各部位と野菜から出た水分を用いて、肝の風味と味噌だけで味付けするため、旨味がギュッと凝縮されており、辛口の日本酒との相性もぴったりです。味付けや具材は店によって異なりますが、特にあん肝を使う量によって、コクや風味、旨味が大きく変わると言われますから、肝の量を加減して、自分好みの味を追求するのもいいですね。また、加える野菜に決まりはないので、春なら山菜というように、旬の具材を使ってみてもいいでしょう。最後に残った滋味深いスープで雑炊にして〆ると、身体が芯から温まります。

材料(2人分)

あんこう300g あん肝50g 信州みそ150g 白菜4枚 長ネギ6本 春菊2本 えのき茸1/2パック 椎茸2個 木綿豆腐1/2丁 料理酒 適量 七味 適量

作り方
①沸騰したお湯で、ぶつ切りにしたあんこうの身と肝をサッと湯通しし、ざるに上げておきます。
②土鍋などの鍋に、弱火であん肝をつぶしながら乾煎りします。途中、信州味噌を加えて焦げないように混ぜ合わせます。
③❷にあんこう、全ての野菜、豆腐を加えて弱火にかけます。白菜は3㎝幅のざく切り、長ネギは斜め切り、春菊と豆腐は食べやすい大きさに切って準備しておきます。
④あんこうと野菜から水分が出てくるのをじっと待ちます。呼び水として料理酒を少量加えることで、焦げ付きを防ぎます。
⑤具材が隠れるほど水分が出てきたら、グツグツする火加減で5分ほど炊いて完成です。お好みで七味をかけて召し上がり下さい。

教えてくれたのは…

神田 老舗和食 なまこ屋

蔵造りの落ち着いた店内では、季節折々の旬の味覚を使った本格和食を単品またはコースで堪能できます。特にあんこうをはじめ、天然のふぐ、すっぽんなど、高級食材をふんだんに使ったコース料理はリピーターも多い看板メニューです。料理でお花見気分を味わえる4月限定の「桜会席」では、初ガツオ、桜鯛、山菜等、春ならではの食材をお楽しみください。

●東京都千代田区内神田3-5-5 大同ビル1F TEL:050-5484-5621  https://kandanamakoya.gorp.jp/

茨城県の食データ奈良時代に編纂された「常陸国風土記」で「常世の国」と謳われたように、日本屈指の農業地帯として知られる茨城県。県土の大半を平地が占めており、その多くが農地になっています。特産物のメロンの生産量は全国1位。畜産物では奥久慈軍鶏、常陸牛、ローズポークが全国的に知られています。また、水戸地方は納豆の名産地として有名ですが、「そぼろ納豆」のような伝統的なお惣菜のほかに、「納豆パスタ」、「納豆唐揚げ」といった、趣向を凝らした新しい納豆料理も数多く出回っています。


取材・文/有元えり 写真提供/神田 老舗和食 なまこ屋