各地の気候風土とそこで穫れる食材とを礎に育まれてきた日本の郷土料理。連載「未来に伝えたい、ニッポン和食遺産」では、先人たちの知恵と想いが込められた47都道府県の逸品を「ニッポン和食遺産」と名付け、人気の郷土料理店のレシピとともにご紹介します。連載第18回目は静岡県の「静岡おでん」です。
全国津々浦々におでんは数あれど、名実ともにトップランクの知名度を誇る「静岡おでん」は、駄菓子屋発祥の食べ物で、もともとは子どものおやつとして親しまれた存在だといいます。現在では町の定食屋や居酒屋で味わう料理に様変わりしましたが、静岡市内には2つのおでん街があり、屈指の観光名所になるほどの人気ぶりです。牛すじをベースにした黒いつゆが最大の特徴である「静岡おでん」は、具材に串を刺して煮込み、仕上げにだし粉と青のりをふりかけて食べるのが流儀です。ネタにはなんといっても黒はんぺんが外せません。イワシが主成分の黒はんぺんは、引き締まった食感の練り物で、ふわふわの白はんぺんとは全く異なる味わいです。静岡以外ではなかなか入手できないので、家庭でつくるならお取り寄せをするのが確実でしょう。
静岡おでんの黒いつゆは、最初からつくれるものではありません。アクをしっかり取り除いた牛すじのゆで汁を基にしたつゆを何回か継ぎ足していくうちに、独特の真っ黒なつゆに変化していきますが、旨味がどんどん増して、まろやかで深みのある味わいになっていきます。しかし見た目ほど濃い味ではなく、上品であっさり。静岡の地酒「喜久醉(きくよい)」のように穏やかで軽快な味わいのお酒とよく合います。
牛すじ500g 大根1/3本 玉子4個 黒はんぺん4枚 ちくわ4本 こんにゃく4枚 厚揚げ4枚 じゃがいも4個 だし粉大さじ1 青のり大さじ1 からし適量 【A:つゆ】牛すじのゆで汁1ℓ かつお出汁1ℓ 薄口醤油120㏄ 料理酒120㏄ みりん120㏄ 砂糖60g
作り方
①たっぷりの湯(分量外)を沸かした鍋に牛すじを入れ、一度ゆでこぼしをします。牛すじをきれいに洗った後、アクをとりながら約1時間しっかり下ゆでをし、火を止めます。
②牛すじをゆで汁につけたまま、しっかり冷ました後、ひと口大に切り、串に刺しておきます。
③大根は皮をむいて輪切りにした後、串が通るまで下ゆでします。玉子はゆでて、殻をむいておきます。
④黒はんぺんほか、お好みの具材に串を刺しておきます。
⑤❶のゆで汁をベースにした【A】のつゆを鍋に入れて、おでんのネタを並べ入れたら、弱火で約1時間煮込みます。
⑥皿におでんを盛り、だし粉と青のりをかけたら完成です。お好みで、からしをつけてお召し上がりください。
⑦食べ終わったら、合わせだしは冷凍保存しておき、次回作るときに継ぎ足して使います。5回ほど繰り返せば、黒いつゆになります。
教えてくれたのは…
静岡料理 E-ra(いいら)
静岡県の方言で「良いでしょう」という意味の言葉を店名にする、静岡料理専門の居酒屋。上品に仕上げた出汁の静岡おでんのほか、焼津の老舗「サスエ前田魚店」直送の新鮮な鮮魚、約20種類揃える静岡の地酒、季節の肴を味わえます。夏にはカツオ、金目鯛、太刀魚などの旬の魚を刺身、焼き魚、煮魚でどうぞ。おひとりから家族連れまで、居心地のいい落ち着いた空間でゆったりと食事を楽しむことができる一軒です。
●東京都目黒区祐天寺1-22-6 中村ビル102 TEL:03-3715-1620 https://e-ra-japanese-izakaya-restaurant.business.site
※緊急事態宣言中はテイクアウトのみの営業
取材・文/有元えり 写真提供/静岡料理 E-ra(いいら)