和食遺産VOL.17/おたぐり(長野県)

各地の気候風土とそこで穫れる食材とを礎に育まれてきた日本の郷土料理。連載「未来に伝えたい、ニッポン和食遺産」では、先人たちの知恵と想いが込められた47都道府県の逸品を「ニッポン和食遺産」と名付け、人気の郷土料理店のレシピとともにご紹介します。連載第17回目は長野県の「おたぐり」です。

長野県南部のソウルフードと言われる、馬のモツ煮込みの「おたぐり」。草食動物である馬は、腸が20~30mと長く、下ごしらえの際にその腸をたぐり寄せて洗うところから「おたぐり」という名になったと伝えられています。伊那谷が発祥とされるこの馬肉料理は、新鮮な馬の内臓を根菜と一緒に煮込みますが、塩味、味噌味、醤油味など、味付けは家庭やお店によってさまざま。さらに同じ県でも南北で文化も言葉も違う長野県は、使用する醤油や味噌も異なるといいます。それだけに、エリアによってバリエーション豊かに味を展開する「おたぐり」は、長野県の行く先々で異なる味が楽しめます。

今回は、南信州で親しまれている「おたぐり」を再現するべく、赤味噌と信州味噌をブレンドして、赤みを出すように仕上げています。馬のモツは味にクセがあるため、2~3回ゆでこぼすといった下処理が肝心です。特に、初めて味わうのなら臭みをしっかり抜いておくと食べやすくなります。そんな馬のモツの独特な風味が特徴の「おたぐり」は、一度食べたら箸が進むこと請け合いで、お酒のつまみにもぴったり。合わせるとしたら信州木曽の「七笑」のような、コクのあるまろやかな辛口の日本酒がお薦めです。

材料(4人分)

馬モツ(新鮮なもの)300g 大根1/8本 人参1/4本 水500g 料理酒大さじ2 赤味噌大さじ2 信州味噌大さじ2 白ネギ適量

作り方
①鍋で馬モツを、2~3回ゆでこぼします。
②大根、人参を銀杏切りにし、同じくらいのサイズにしておきます。
③❶を取り出し、ひと口サイズに切り、鍋で柔らかくなるまで水と酒で煮込みます。
④❸が柔らかくなるまで煮込んだら、❷を合わせます。
⑤大根、人参に火が通ってから赤味噌、信州味噌を加え、20分程煮込みます。
⑥味を調えてお皿に盛り、刻んだ白ネギを添えたら完成です。

教えてくれたのは…

信州家庭料理 アネッソ・やまか

長野県木曽町の老舗温泉旅館「やまかの湯」の姉妹店として、2017年にオープン。信州の選りすぐりの食材を使った郷土料理と創作和食を、信州の地酒と一緒に楽しむことができる一軒です。木曽産の蕎麦粉を使った十割蕎麦や、開田高原で採れた甘みの強いトウモロコシのコロッケ、信州サーモンの昆布締めなど、食いしん坊にはたまらないメニューがずらり。ワインの品揃えも充実しており、長野産の希少なワインとのマリアージュも堪能できます。

●東京都中央区月島3-28-12風戸ビル TEL:03-5859-0090 www.yamaka.co.jp

長野県の食データ内陸に位置する長野県は、日本アルプスをはじめとした山岳地が広がる、自然豊かなエリアです。全体的に冬の冷え込みは厳しく、夏は長野市や松本市などの盆地部ならば朝晩、涼しいことでも知られています。食材では、夏の冷涼な気候を活かして栽培される高原野菜や味噌の醸造が有名。また、水質や環境に恵まれていることから日本酒やワイン造りも盛んです。長野県民は長寿の傾向にあるとされていますが、赤カブの葉の漬物である「すんき」のような乳酸発酵食品を日常的に摂取していることとの関連性など、その食生活にも注目が集まっています。


取材・文/有元えり 写真提供/信州家庭料理 アネッソ・やまか